エチオピア徘徊中の2月上旬、G元北大教授からメールが届いた。

──人間は万物の霊長などと威張るな。己に役立つかどうかで「害虫、害鳥、害獣」そして「益虫、益鳥」などと勝手なことを言いよる。人類は地球最大の害獣なることを銘記せよ──

 そーだよなあ~。他の生物にとって人間ほど害をもたらす存在はない。

エチオピア北部の半砂漠を突っ切る

 

 エチオピアの半砂漠地帯を突っ切る道路を高速で走り抜けながら、G先生の言葉が脳裏から離れなかった。

 乾季の北エチオピアは、ブッシュが点在するだけでほとんど緑らしいもののない広大な半砂漠地帯が広がっている。それでも野生生物にとっては楽園らしい。なにせ、点在する小集落を除けば、この荒涼とした広大な土地にいる人間は、遊牧生活をするアファール族くらいなもの。

 道東のエゾシカ同様、ここでも車にひき殺された野生動物の死骸が道路上に点々としていた。道路脇にはインパラの仲間だろうか、バンビのような小型のシカ?が群れている。

 あっ、危ない! 猛スピードで走る私たちの乗ったマイクロバスの前に、子鹿がのこのこ出てきた。ブレーキを踏むこともハンドルを切る間もなかった。柔らかい物がぶつかる鈍い小さな音と、かすかなショックが乗客にも伝わってきた。

 それから間もなく、フロントガラスが乾いた音を響かせた。野鳥がぶつかったのだった。

子鹿も小鳥も即死だろう。

 

 植物も含め、地球上の生物にとって人間ほど害をもたらす存在は見当たらない。その害獣が地球上に誕生して以来、あらゆるところに拡散し、はびこってきた。熱帯のジャングルから砂漠地帯、一年の大半が氷に閉ざされる極北、高度3000㍍を超えるヒマラヤ、南太平洋の孤島に至るまで、ことごとく人間が住み着いた。

 その環境適応能力と繁殖力は驚くばかり。生命力の強いことで知られるゴキブリだって、これほど厚かましくはない。私自身、無垢の命を奪いながら厚かましくも地球上をあちこちはい回っている。典型的な「害虫」の一員である。

 

 緑のまばらな乾季の半砂漠に、ときどき「白い花」を枝いっぱいに咲かせた潅木を目にすることがある。近寄ってみると「白い花」と見えたのは、ビニール袋の類。風で吹き寄せられブッシュにひっかかったのだった。これまた「地球最悪の害虫」のなせる仕業である。

ごみの花。ただし東北大震災の現場

  そして、今回の原発事故。「地球の害虫」もここに極まれり・・・なのかも。