日本初の宇宙飛行士秋山さん(毛利さんではない!)がテレビ局を辞めて農業に転身したことは知っていたけど、まさかフクシマ第一原発の近くに住んでいたなんて!

 自主避難区域のわずか2㌔外側、事故を起こした原発から32㌔で椎茸栽培を主とした有機農業をしていた。事故直後に自宅から逃げだし、友人知人らのつてを頼っての「原発難民」となっていた。

 「農のある暮らし」に人生を見いだし、ふだんから原子力の危険性を訴えてきた著者たちの仲間は、「原子力の安全性」を強調してきた政府、電力業界、学者らの「原子力ムラ」に対する怒りが収まらない。この原子力ムラに一矢を報いんとまず書いたのがこの怒りの1冊。ほんの小さなブックレットだが、著者の怒りが十分伝わってくる。

 著者は事故前から放射線警報器を持っていた。放射線には「これ以下なら安全」を保証する安全基準のようなものはない、こともよく知っている。だから、政府や東電、マスコミの言うことなんかハナからアテにせず、自主避難した。

 

 私は政府や東電が意図的に事故隠しをしたのか、対応に大きな間違いがあったのか、詳しくは知らない。あるいは一般住民の放射線による健康被害は「たいしたことない」とも思っている。もちろん、今後、汚染地域に戻って長期間生活するようなことがあれば、話は別だが。

 でも、著者をはじめ住民たちがいち早く逃げ出した行動は正解だったとも思う。大津波も含めて最終的には「自分で判断する」「自分で自分に責任を持って行動」しなければ、どうしよーもないケースだろう。多分に確率的な現象でもあるのだから。

 政府・東電の発表を垂れ流す一方で責任の追及に忙しく、「安全か危険かはっきりしろ」だのと、しょうーもない質問を繰り返すマスメディアの不勉強ぶりにもげんなりさせられた。

 この冊子で知ったことの1つに、佐藤福島県知事は原子力推進派、それもプルトニウムを利用するプルサーマルの推進派だった、ということがある。総理大臣や関係大臣に対して、あんなに威張っている(ように見える)から、もともと原発反対派かな、と勘違いしていた。

 ちなみに私は反原発派ではない。「遺伝子操作はダメ」「輸血はダメ」「中絶はダメ」とかいろいろな禁忌があるけれど、原子力も含め、こうした「開かずのトビラ」を増やすことには、あんまり賛成できない。それに、これまで発展させてきた原子力技術を、ここでやすやすと手放すのは惜しいような気がする。

 人間が地球上最大の害虫であることを自覚した上で、知恵を働かせる方がいいんでないかしらん? 西欧文明を両手を挙げて称える気にはならんけれど、「文明化」に遅れた地域ほど自然崩壊が進んでいるのを目にすると、科学や文明が自然や精神文化と対立するものだとは思えんのだ。