ベトナム、カンボジア、タイに、たかが2ヵ月あまり滞在したくらいで、何か言うのはおこがましいけど、印象を述べさせてもらうなら、ハゲが極めて少ないのではないか? ほとんど、否、まったく見かけなかった。たまに出会ったハゲは、ヨーロッパ系。
 そこで思い至った。頭髪は防寒のためにあるのではない。強い直射日光から皮膚を守るためにあるのだ、と。
 ある人は、毛が薄いのは進化のしるし、ハゲは進化が進んだから、なんぞとお馬鹿なことを考える。ハゲが生存にどんな有利な点があるというのだ。せいぜい洗髪が楽な程度だ。欧米人といえば、進歩した人間、果ては進化の進んだ人間と考える、過去の遺物のような考え方だ。
 
 私の解釈はこうだ。人間はもともとハゲもハゲでないのもいた。可能性は両方あった(割合は知らないけれど)。
 南国の強い紫外線の下では、これを直接浴びるか、遮るかで皮膚がんになる確率に差が出ると思われる。たかだか0.1%くらいの差だったとしても、数千世代もたてば、はっきりと適者生存の有意差が生じたはずである。
 西欧など北方では、紫外線が弱いから、有意差にならなかった。
 
 そーいや、わが父方は大陸系北方モンゴロイドの傾向が強い。だからハゲ(というわけでもないけれど)。これに対し、母方は東南アジアに起源がありそうな、大きな目をしていた。わが可愛い姪っこに代表されるような顔。ハゲの遺伝子はない。
 
 と、以上のようなことを愚考していた。
 
 バンコクで、酒飲み話に、以上のような迷説を披露したら、在泰日本人から疑問が出された。
 この3国、特にベトナム、カンボジアの平均寿命は、日本よりかなり低いはずだ。ハゲが少ないのは、高齢者が少ないせいではないか?
 こいつは説得力がある。平均寿命が10年も違えば、ハゲの出現率もかなりの差が出るだろう。これらの国の寿命が延びれば、ハゲ人口も増えるはずだ。こいつは、きちんと統計的に比較検討しなくちゃ、結論が出ない。
 
 でも、今はまた、寿命差だけでは、3国にハゲがいないことを、説明できないのではないか、と考えている。直感だが。見たところ3国には若ハゲがまったくいない。欧米や日本にいるのに。わが仮説に説得力がある、と内心思っているのだが・・・