チェンマイで大枚900バーツもはたいて、山岳少数民族見学の1日ツアーに参加した。何重もの輪(これはばね状になっていて取り外しが可能)に首を通す、奇習で有名な首長族(Long Kneck Karen)とラフー、アッハー、カレン(Long Kneck もカレン族の1グループ、ここは別グループの集落)、リースー、バーローの6集落を訪れた。
 Long Kneck Karen以外は、ちゃんとした生活基盤に値する集落だったが、Long Kneck Karenは売店の集合体みたいな広場だった。あとで、その隣接地に彼ら(彼女らの)の生活の場があると聞いた。
 最初に何か奇妙な感じを受けた。子供のころから長期間かけて首を長くする、そのカルチャーの奇妙さもあるけれど(カルチャーなんて、その文化を持たない他の民族から見れば、どれも大なり小なり奇妙なものではあるけれど)、いかにも見世物的なのだ。
 7-8歳の少女には赤い口紅と白粉で化粧をさせていた。かなりの美少女ではあるが、この子が笑いを忘れたように、無表情だった。
 俺はぶしつけを承知で、彼女らの写真を撮った。罪滅ぼしに、彼女たちから布切れを3枚ほど買った。
 
 ガイドのベンさんに、疑問をぶつけてみた。
-彼女らが首を長くするのは何のためか?
「首が長いのが彼らの間では美しいとされたから」
-昔はたしかにそうだったかもしれないけど、これだけ一般社会と交流のある今、本当は観光目的ではないか?外人観光客向けではないのか? 首を長くしていない人もいた。
「それは同じカレン族でも別のグループだから」
--なんとなく腑に落ちない。
 
 タイ、ラオス、ミャンマーの国境が接し、山岳少数民族の麻薬作りで有名な(もう過去の話かも)ゴールデントライアングルに近い、チェンライに来て、山岳少数民族博物館を訪ねた。
 その展示文の中に「Long Kneck Villageは幻」とあった。続いて
 Long Kneck Karenは近年、観光業者によってミャンマーから連れてこられた。われわれはこの『人間動物園』に反対する。彼女たちのpromiseがなくなれば、Long Kneck 女性はいなくなるはず。
 
 翌日、もう一度博物館に行き、マネジャー氏に疑問をぶつけてみた。
 
 その結果わかったことは、彼女らはミャンマーのカヤ州から、タイのチェンマイ、チェンライ、メホンソン周辺に、この数年の間に見世物になる女子供だけ連れられてきた。男は来ていない。多分、夫婦で連れてきたら余計な経費がかかるからだろう。Villageとはいっても彼女らの生活の糧は売店収入のみ。Village(あるいは業者?)は観光客から一人当たり250だか300バーツの入場料を取っている。ツアー代金はその入場料を含んでいる。
 どーりでツーアーの中には、Long Kneck 訪問の場合は、別途500バーツ申し受けます、などの但し書きがあるものがあったわけだ。
 ミャンマーのカヤ州は外人の立ち入りが難しく、実際に首を長くするカルチャーを持った人々がいるのは確かだが、その実態はよく分からない、という。
 それにしても彼女らのpromiseの内容はどうなっているのだろう。契約でも交わしているのだろうか? 彼女たちは夫の待つミャンマーの村にいつ帰ることができるのだろう? ミャンマーでの生活実態は? よほど社会から隔絶されて生きているのだろうか?
 
 なんだか疑問がますます深まってしまった。