副題に「正しい知識と備え」とあり、帯に「その日はいつくるのか!!切迫する足下の危機 地震の顔がいま見えてきた」とある。

 「地震の顔」が本当に見えているのかどうかは、怪しいもんだが、今現在の(とは言ってもこの本が出版されたのは、神戸大震災2年後の1997年)地震の知識・研究が一般読者向けに解説されている。ちょっと教科書的だが、世界各地の大地震の例を取り上げ、著者自身の観測経験なども織り交ぜて、分かりやすい。

 今では断層活動が地震を起こすことは常識のように語られているが、1950年代までは、「断層は地震の原因」よりも「地震の結果」であると考えられていた。

 平行で逆向きの力が断層運動を引き起こし、それが地震となることを数学的に導き出したのは日本の研究者だった。ダブルカップル理論。現在の地震学は、基本的にはこの理論の上に成り立っている。

 そーか、そうだったのか。そんなすごい、基本的な理論だったのか。1970年ころ、研究者たちが、地震波の到達した地域を四象限に分けて、初動の波が「引き」だの「押し」だのとやっていたのは、ダブルカップル理論に基づいたものだったんだ、と今さらながら理解する(今さら遅いねぇ)。

 「地震の顔が見えた」という帯の売り言葉とは裏腹に、地震というやつは、人間にはなかなか手に負えないやっかいなやつだ、の感を深くした。