自称「骨屋」。古い人骨の形や大きさを計測し、古今の骨格標本と比較する。時には顕微鏡やX線を使って調べ、研究するのが骨屋の仕事。

 従来、古人骨の研究は、日本人の由来だとか人間グループの系統を研究するのが主流だった。例えば、縄文時代以前から人間が住み着いていた日本列島に、弥生時代以降にたくさんの渡来人が渡ってきて混血した。あるいは日本人は大陸のどこそこの人に似てるとか似てないとか・・・等々。

 著者は、こうした系統の探索からは距離を置き、その骨の持ち主だった当人の生活の跡をその骨から知ろうとする。生前に病気をすれば、骨に異常が残る場合がある。骨折を伴うような大けがをすれば、治癒後もはっきりと痕跡が残る。労働の結果、骨に独特の形状が生じることもある。

 この本自体は、そういった専門的な内容にはさらっと触れるだけで、骨屋としての日常の体験を軽ーいタッチで綴った。いわばエッセー集。角川書店の本のPR誌「本の旅人」に2年間にわたって連載したものをまとめた。1回あたり原稿用紙10枚ほどの分量なので、気軽に読める。硬い骨ばかりを扱う研究者にしては?なかなか柔らかな文章を書く。骨をテーマにしたミステリーも大好きだそうだから、むべなるかな、である。アタマがやわらかい。