これまであちこち彷徨(さまよ)ってきたけれど、目的地に到達するまでに12日間も要したのは初めてだ。それも途中、寄り道もせずに。

 3月15日朝に日本を出発し、ベンガル湾に面したインドの第4の都市チェンナイ(マドラス)に16日午前中に着いた。ほぼ27時間。安売りチケットのため、香港とニューデリーで、それぞれ6時間以上待たされた。これは安売り航空券を利用した時しばしば経験することだ。慣れている。

 チェンナイに着いてすぐ船会社に行った。次のアンダマン・ニコバル行きフェリーは23日出港だった。まるまる1週間チェンナイでぶらぶら過ごした。

 フェリーは月に2、3度のペースでチェンナイとアンダマン・ニコバル諸島の州都ポート・ブレアの間を往復する。

 運航スケジュールは前月にならないと決まらない。数ヵ月も前から安売り航空券を手配する貧乏旅行者には、フェリーの運航スケジュールに合わせて、航空券を手配するというわけにはまいらぬ。

 運が悪いと10日間以上もチェンナイで待ちぼうけを喰らう可能性もある。

 空の便はいくらでもあるのだが、今回は片道でも良いから船便を使いたかった。以前知り合った若い旅行者から聞いたことがある。

 ――これまでいろいろ旅してきたけれど、アンダマン航路の長い船旅も、つらい旅の1つだった――

 チェンナイから船が出ているのを知ったのも、彼からだった。

 船賃なら航空運賃の5分の1くらいで済む。航空券は往復で2万ルピー(3万4千円。通常価格。百円は約60ルピー)。これに対しフェリーは一番安い船底のBunk(バンク)なら片道1、965ルピー(3千4百円)。私の場合は60歳以上のシニア料金が適用されて982.5ルピー(1,700円)だった。これ以降、アンダマンの各島を結ぶフェリーを利用するたびに、シニア料金の恩恵を受けた。

 船旅は3泊4日。3月23日の午後にチェンナイから乗船して、26日の朝、ポート・ブレア港で下船した。その間、フェリー「スワラジウイープ号」は見渡す限り何もないベンガル湾を、ひたすら真東に向かって走り続けた。その距離約1、200㌔。

 東京から香港、香港からニューデリーへと西に移動した後、そこからはチェンナイ、アンダマンへと東へ逆戻り。目的地に着いてみたら、そこはタイとは目と鼻の先だった。

 思えばひどく遠回りをして来たものである。

 

メモ アンダマンのポート・ブレアには、コルカタからも船と飛行機が出ている。船はやはり月に2~3往復。飛行機なら前割の安いのを手配できると往復で1万1千ルピーくらいからある。