2年ぶりにカンボジアに行って、その変化の激しいのに驚いた。

 

 タイとの国境からアンコール・ワットのあるシェムリアップまでの道路が、すっかり舗装されていた。2年前はあっちこっちで工事中。バスの窓の隙間から土埃が煙のように入り込んできて、体中が真っ黄色になった。その工事が完成した。国境のポイペト―シェムリアップにかかる時間は半分に短縮された。

 まずポイペトの町の印象が、がらりと変わった。2年前に初めてこの町に着いたとき、正直なところ不安を覚えた。

 町の中はゴミだらけ。道路はもちろん未舗装。そこをたくさんの荷車が列をなしていた。年寄りから10代前半に見える子供までが、木製の枠を取り付けた大きな荷車を押していた。

 2年前のポイペト。荷車の列

 

 彼らの服装は土埃にまみれ、貧しいのは一目で分かる。朝は国境の入管事務所前にたくさんの空荷車が列をなし、開門と同時にタイ側に走り出す。タイ側の市場で山ほど物資を買い付けてカンボジア側に戻ってくる。

 メイン通りから裏道に入ると、さらにすごかった。履き古した靴やボロ切れのような古着の山と並んでゴミの山。路面は地面が見えないほどゴミで覆われていた。

 

 今は裏道も含めて道路が舗装され、ゴミの山も一掃された。メイン通りに面して真新しい3、4階建ての建物が建ち並んだ。ゲストハウスなどの宿泊施設が多いようだった。心なしか荷車を押す人の数も減ったようだし、着ている衣服もましになったように見える。

 

 アンコール・ワットのあるシェムリアップの郊外には、外資系とおぼしき高級ホテルがいくつも進出した。

私は前回と同じゲストハウスを利用した。ここはもっぱら国内の旅行者や隣国タイ、カンボジアからの出張者が利用している。1泊の値段は5~7$。

これに対し、これら高級ホテルは100$以上。泊まったことがないから確かなことは言えないが、広い敷地に外観も豪華。カンボジアの庶民には無縁の施設である。

 

町の中心部からアンコール・ワットに通じる道路は、もともとがこの国には不釣り合いな幅広い観光用舗装道路で、道路脇の樹木は手入れが行き届き、ゴミも落ちていなかった。その外国人観光客向けの「顔」が、この2年間でさらに徹底された感じ。

昼間は町の中で物乞いを見かけることが、ほとんどなくなった。袋を担いでゴミだめをあさる子供の姿も見かけなくなった。少なくとも観光客が多い中心街からは一掃された。

 

夜、地元の人が利用する街外れの路上食堂で飯を食っていたら、物乞いがテーブルの前に次々と現れた。子供が来た、子供の手を引いた女がきた、腹を減らした男が来た。断っても断っても、後を絶たなかった。必ずしも乞食を専門?にする人々ばかりではなさそうだ。

つまりは町から物乞いが全くいなくなったわけではないようだ。想像するに、観光客から見える場所からは一掃されたのではなかろうか?

 

近郊の村々からシェムリアップに仕事を求めて人々が集まってきている。外国からの裕福な観光客の増加で経済は拡大している。一方で、物価の値上がりも激しいという。発展途上国が通り抜けなければならない宿命みたいなもんか?

 

トンレサップ湖の観光客用船着き場は、貧しい漁師が住む運河河口から少し離れた場所に移っていた。近くには観光客向けの新しい施設も出来ていた。かつて船着き場のあった運河河口付近に目をやると、アシとカヤでつくったような粗末な家が、以前と同じように並んでいた。