ジャーナリストによる人類の進化史。

科学者による類書と違って、断定的な表現や分かりやすさはあるが、その根拠が十分に語られていない箇所も多く、果たしてどの程度信用できるものか、私には疑問符が付くところが多かった。

 

 記述の根拠は主として最近の遺伝子解析に依っている。そのことは、ここ5、6年の間に出版された、この手の本に共通する。

人類は5万年前にアフリカを出てからも進化し続けている。人種の違いもその進化の違いにある、等々。

 ここでの進化を遺伝子の変化と読み替えるなら、それは事実だろう。皮膚の色1つとっても、その土地に合わせて有利な色に変化した。それはとりもなおさず遺伝子の変化である。

 

 でも、遺伝子の差を人種間の優劣に拡大しかねない危うさが、この本にはある。アシュケナジ(ドイツ・ポーランド・ロシア系ユダヤ人)が優秀で、知能指数が高いのは、遺伝子に変化が起きたからであると考える。その起因遺伝子も解明されているのだそうだ。

「知能」だの「優秀さ」だのという極めて計測しにくいものを、人種間の比較に持ち込むことはそれほど科学的なんだろうか? もちろん分野分野で、生まれながらに「優秀」な人間がいるということに異存はないけれど。

 

それと狩猟採集民や未開民族は互いに戦いに明け暮れていたから、攻撃的だった。人類は文明化によってその攻撃性が薄らぎ、互いに信頼するようになった、と考えているようだけど、何か根拠があるんだろうか?

日本では縄文時代から弥生、古墳時代と時代が下るに従って、戦闘の跡が激しくなっているのではなかったかしらん?

 

さらにネアンデルタールやホモ・エレクトスなど他の人類が絶滅したのは、現生人類が戦い滅ぼしたから、としているのも果たして本当か? もちろん同時代に生きていたらそれなりの軋轢はあったろうけど。

 

誤植や意味不明の記述があちこち目に付く。